オットーボイレン Ottobeuren

バイエルン州
人口約9,000人

概要

オットーボイレンを訪れる最大の目玉は、ドイツの数多い教会建築の中でも珠玉の名作と呼ぶにふさわしい、ドイツでバロック様式最大のベネディクト会の修道院の教会を見るためだ。

オットーボイレンは、ミュンヘンの西約90km、アルゴイ・プレアルプスの山々を背景に、おだやかな起伏の続く地方の丘陵に囲まれた小さな町だ。
車を使えば、ミュンヘンからでも1時間ほどで行くことができるが、列車とバスを使うとほぼ一日がかりになる。
ウルムUlmから南へ伸びるローカル列車でメミンゲンMemmingenまで行き、そこから頻度の少ないバスを使って南東方向に20分ほど行く。

764年ここにベネディクト会の修道院が建設される。
市庁舎の塔にある「764」と言う数字がそれを表している。
庇護者のカール大帝が広大な権限を授けたために、最初から著しい発展を見せた。

962年には神聖ローマ帝国皇帝オットー1世によって帝国大修道院の地位に格上げされた。
その後、三十年戦争など幾多の戦災の遭った。
そして18世紀、この修道院が、時代の好みに合わせて完全にバロック様式に造り変えられることになった。
そこにはザルツブルクの影響(翼篩部の丸くなった袖廊)や、ローマ(クーポラ)、フォーアルルベルク(積み重ね仕切り)などの影響が混じり合っている。
ミュンヘンの大建築家ヨハン・ミヒャエル・フィッシャーJohann Michael Fischerによって後期バロック様式で付属の教会が建築された。

500mにも及ぶ長い修道院はともかく、最大の見どころは2つの塔を持つこの教会である。
一般にキリスト教教会の伝統的な建物は東西に身廊が造られているが、ここでは南北に長くなっている。
これにより東西の横窓から差し込む陽光を浴びて内部の華麗な装飾が一層華やかに見える。
多くのドイツ、イタリアの美術家達が精魂こめて作り上げた大作で、祭壇、聖像、天蓋のフレスコ画など、どれも精緻な構成と高雅な色彩の調和にあふれている。

この修道院で、16世紀の初め、世界で最初の印刷所のひとつが開かれた。

保養地であるオットーボイレンでは健康がキーワードとなっている。
この町でセバスチャン・クナイプが生まれた。ドイツの浴槽剤、「クナイプKNEIPP」の創始者、水を利用したクナイプ療法の5つの柱は、今日でも実際に応用されている。クナイプ療法が行われている地域では手つかすの自然が重要で、全体的治療があらゆる生きる力を呼び起こすとされる。

オットーボイレンでは1945年以降、宗教的政治的な意味合いを持つ大きなイベントとして、毎年様々な音楽コンサートが開催されている。
指揮者も有名な人が来ている。カラヤン、レナード・バーンスタイン、オイゲン・ヨッフム、ラファエル・クーベリック、カール・リヒターといった人が名を連ねている。
人と国の共生というテーマと民族を結び付ける音楽の力は今日でも永続性があり、当時と変わらずオットーボイレンのコンサートの土台となっている。

オットーボイレンへのアクセス

フランクフルト FrankfurtとミュンヘンMunchenを結ぶ幹線の途中駅ウルムUlmで下車する。特急ICEも停車する。
ウルムUlmから南へ伸びるローカル列車でメミンゲンMemmingenまで約35分、ほぼ1時間間隔。
そこから頻度の少ないバスを使って南東方向に20分ほど行く。

バスは「オットーボイレン」という名の付いたバス停がいくつもあるので、運転手に出発時に修道院教会Klosterkircheで降ろしてくれと伝えておく。
バス停はCafe Park Ottobeuren というところだ。

ミュンヘンからは日帰りできるが、フランクフルトからは無理だ。ウルムUlmかメミンゲンMemmingenに宿をとった方がいい。

修道院付属教会 Klosterkirche

とにかく巨大な建物だ。この様式の建物としてドイツ最大のものであり、塔の高さ82m、身廊の長さ90m、トランセプト(翼廊)の幅80mに達する。
正面に並ぶ2本の塔から修道院のいちばん奥の作業用の建物までの距離は、480mを下らないのである。
「バロック教会の外観は、それ自体として価値を持つわけではなく、内部から働く圧力をただ単にヴォリュームに置き換えて反映しているだけである。」ドイツの美術批評家たちの理論はそういうものであるが、その理論が立証されるのは、まさにオットーボイレンにおいてである。
入口をくぐったとたん、訪問者は内部の空間の明るさに驚かされる。
キリスト教世界の伝統的習慣とは異なって、この教会は南北方向に建っているため、内部の照明が見慣れぬものなのである。
一日の終わりごろ、時にはほぼ真横から光が差し込み、並外れた効果を見せることがある。
色彩は非常に調和にみちている。ピンク、黄色、オークル色、紫などがいずれもハーフトーンであり、一方ボールトのフレスコ画はより温かい色調をみせている。比較的薄暗い内陣では、より濃い色彩が板張り部分の金色や錆色とよく調和している。

トランセプト(翼廊)の交差部 Vierung

この場所に立って受ける力強さの印象は強烈である。実際十字交差部の内部空間だけで、ゆうにひとつの教会を形作れるくらいである。建物全体が、頂上を少し押えた中央のクーポラを中心に配置されている。十字交差部の柱を、角を切り落した形で配置したのはヨハン・ミヒャエル・フィッシャーである。
注目に値するのは、オットーボイレン地方および帝国全体の守護天使たる聖ミヒャエルの祭壇、もろもろの守護天使たち、聖ヨーゼフ、洗礼者聖ヨハネスなどの祭壇であるが、なかでも特に目につくのは、説教壇を形作る華麗な細工と、その向かい側、洗礼盤の上にあるキリスト洗礼の群像である(彫刻はヨーゼフ・クリスティアンJoseph Christian )。
ヨハン・ヤーコプ・ツァイラーJohann Jakob Zeillerのデザインした床石は、十字架と円環と星をモチーフにしている。クーポラを飾る壮大な構成の絵「聖霊降臨祭の秘跡」を描いたのも、同じツァイラーである。

内陣 Chor

内陣の入口を画する聖体の秘跡の小祭壇の上に、人々の篤い信仰を集める12世紀のキリスト像が安置されている。その像を取り巻く天体は宇宙の王国を象徴する。
主祭壇は三位一体の栄光に捧げられている。祭壇を支える円柱の足元には、聖ペートルス(ペテロ)と聖パウルス(パウロ)、アウクスブルクの司教でありシュヴァーベンの守護聖人である聖ウルリヒ St.Ulrich、隣接するコンスタンツ旧司教区の司教であり守護聖人でもある聖コンラ・-卜hl.Konradなどの彫像が置力ヽれている。
くるみの木で造られた聖職者席 Chorgestuhl (1764年)は、内陣のオルガンとアンサンブルを形作っている。菩提樹を用いた高い背もたれには浅浮彫が施され、金色に加彩されている。作者はヨーゼフ・クリスティアン(聖ベネディクトゥスの生涯や聖書の情景を描いている)。
南ドイツのオルガン製作者ジルバーマンSilbermannの弟子のカール・ヨーゼフ・リープ Karl-Joseph Riepp (1710~1775)は、1766年、内陣のオルガン Chororgelnを製作した。
その装飾と楽器のアンサンブルは、それだけですでに豪華なものだが、1957年にはさらに新しい「聖母のオルガン」が付け加えられ、現在は祭壇に向かって右と左に、それぞれ独立した二つのオルガンが設置されている。

修道院の建物 Klostergebaude

1711年から1731年にかけて建てられた。修道院長館 Pralaturには、皇帝の間をはじめ、恒例の豪奢な広間がいくつかあるほか、他の設備としては壮麗な図書館 Bibliothekと劇場 Theatersaalがある。















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