カセレス Caceres
概要
15~16世紀の貴族の館がたくさん残されているのが特徴的である。城壁はイスラム時代のものだが、ローマ人が紀元前35年に築いた城壁の上に築いており、非常にこぢんまりしていて、300m×200mしかない。キリスト教徒は3回この町を奪回するが、イスラム教徒に奪い返され、最終的に1220年にレオンのアルフォンソ9世が再征服(レコンキスタ)することができた。この中にゴシック様式のサンタマリア教会など数多くの教会が建てられている。
裕福で活気あふれた中世の貴族や冒険家として世界を征服して財を成して錦を揚げた富裕者の館が残されている。
貴族の館としては、
カルバハル邸 Palacia do Carvajal
ゴルフィネス下屋敷 Palacio de los Golfines de Abajo
ゴルフィネス上屋敷 Palacio de los Golfines de Arriba
こうのとりの館 Casa de los Ciguenas
風見鶏の館 Casa de los Veletas
アルクエスカル司令官の館
などがある。
アクセス
マドリッド・アトーチャ駅から列車で3~4時間、1日3本運行
旧市街地
いくつもの塔のそびえるアラブ人の造った市壁の内部に、ゴシック、ルネサンスなどいろいろな様式による貴族の館が建ち並んでいる。
その均整のとれた様子はスペインの町の中でも独特である。
15、16世紀に建てられた貴族の館の壁は平らで、黄土色である。
細長く、いびつな形をしたサンタ・マリア広場 Plaza de Santa Maria)が旧市街の中心となる。
モラ将軍広場Plaza del General Mola(旧プラサ・マヨル/マヨル広場Antigua Plaz∂ Mayor)も人気の広場だ。
見どころ
サンタ・マリア教会 Iglesia de Santa Maria
高貴なたたずまいのこの建物は16世紀に完成し、大聖堂も兼ねている。
3つのゴシック様式の身廊はほとんど同じ高さで、ボールト天井は棟リブ、枝リブで補強されていて、支柱にはめ込まれた円柱の繊細な付け柱にまで延びている。
主祭壇の祭壇飾り(16世紀)は、不幸にもあまり目立たず、またとても暗いが、よく見るとなかなかの出来栄えであることがわかる。
サンタ・マリア教会の左手、ティエンタス(商店)通りCalle de Las Tiendasの入口に、15世紀の塔がそびえるカルパ八ル邸Palacio Carvajalが建っている。ここでは、貴族の舘の内部、客間、内庭、礼拝室を見物できる。
ゴルフイネス要塞宮殿 Palacio de los Golfines de Abajo.
この豪華な邸宅は光栄にも、2度にわたってカトリック両王を迎えたことがある。
その正面壁は15世紀のプラテレスコ様式のゴシック様式の切り石で造られており、15世紀末の世俗建築の特徴である。
対になった窓はイスラムの「アヒメス(2連アーチ窓)Ajimez」の様式をとり入れ、2つの窓と入口の繊細な枠となっているリブもまた「アルフィスAlfjz」を思い出させる。
16世紀のファサードの装飾は、グリフォン(胴体は獅子で頭と翼は鷲)の彫刻のあるフリーズが中央の壁の部分の上にある。
円形装飾とゴルフイネス家の紋章(百合の花と塔)がこの装飾を補っている。
サン・ホルヘ広場 Plaza San Jorgo
イエズス会士たちが建てたサン・フランシスコ・ハピエル(ザビエル)教会 Iglesia de San Francisco Javjerの18世紀の簡素なファサードが広場を囲んでいる。
サン・マテオ(聖マタイ)教会 Iglesia de San Mateo
14世紀に着工された天井の高い身廊には、16世紀に「高い内陣 coro alto」が付け加えられた。この内陣は偏円アーチのアーケードの上にのっていて、全体にきわめて簡素である。唯一の装飾は側廊の礼拝室の紋章装飾のある墓。
北側から教会の周りを行くと、15世紀の2つの塔がある0銃眼は失われてしまっているが、石落しは残っている。
銀の塔 Torre de los Plataと太陽の館 Casa del Solであ。太陽の舘という名称は入口の上に彫刻されたソリス家の優雅な紋章による。
こうのとりの館 Casa de las Ciguenas
現在は軍部が使用している。
この邸宅には銃眼のある塔が偉容を誇っている。
15世紀末におこなわれた破壊命令から免れた唯一の塔である。
ベレタス(風見鶏)の舘 Casa de las Veletas
12世紀末のイスラム・アラブの宮殿のあった場所に、18世紀キリスト教徒が王宮を建造したもの。バロック様式の紋章で飾られたみごとなファサードがある。
今日では県立博物館 Museo provincialになっている。
考古学の発掘品のコレクション(青銅器時代の線刻のある石碑、ローマ時代の遺物)と民俗学資料の展示室(衣服、民芸品)がある。
11世紀のアラブ式の水槽 aljibeは今でも屋根と傾いた広場から流れてくる水を蓄えている。
馬蹄形のアーケードが5列に並び、少し模様のある柱頭のついた花崗岩の円柱に支えられている。
アルクエスカル司令官の館 Casa del Comendador Alcuescar
ゴシック様式の美しい塔のあるこの宮殿は現在パラドールになっている。
窓や角のバルコニーの繊細な枠をみること。
市壁にそって走る小路をたどると、ゴルフイネス上屋敷Palacio de los Gotfines de Arribaの高貴で威厳のある正面壁の前に出る。
みごとな内庭がある。さらに少し下った将軍夫人の館 Casa de la General は大学法学部になっている。
正面にある門から城壁の外へ出る。
モラ将軍広場 Plaza del General Molaへと下りる階段から、城壁、とくにこの部分では高い城壁とオルノ(かまど)塔Torre del Hornoの眺望ができる。
トレード・モクテスマ家邸 Palacio de los Toledo-Moctezuma
フアン・カーノ・サーベドラが、メキシコ・アステカの王モクテスマの娘であった妻の膨大な持参金で建てたもので、上に回廊を巡らしてある重厚な正面壁がある。
鍛冶屋塔 Torre de los Espaderos
ほかの塔と同じように、上部は取り壊されている。
サンティアコ(聖ヤコブ)教会 Iglesia de Santiago
ここがカセレス同胞僧兵団の揺藍の地と考えられている。
この組織そのものがサンティアゴ・デ・コンポステラ同胞僧兵団の元となった。
はじめロマネスク様式であったこの建物は、16世紀に大改修されている。
アロンソ・ベルゲーテ作の祭壇飾り(1557年)がある。
キリストの一生を表すいくつかの場面が、力強く身構えた闘牛士の姿をした聖ヤコブを囲んでいる。
正面にあるゴドイ邸Palacio de Godoyは、隅の重厚な紋章が目をひく。
内部には、化粧タイルazulejosで飾られた内庭がある。
近 郊
山の聖母 Virgen de la Montana
東へ3km。
17世紀バロック様式のこの礼拝堂はオリーヴの木が茂る丘の上にあり、有名な小彫像が納められている。
5月の第1日曜日にはここに向かって華やかな巡礼が行われる。
遊歩道からエストレマドゥラ高原の眺望が広がる。
ガロビリヤス Galrovillas
北西へ36km。
エストレマドゥラ地方の典型的な集落。
一風変わった形をしたアーケードのあるプラサ・マヨル(マヨル広場)Plaza Mayor
は、その田舎風のところが魅力的である。
アーケードの支柱は傾いている。
アロヨ・デ・ラ・ルス Arroyo de la Luz
西へ2Dkm。
アスンシオン(聖母被昇天)教会Iglesia de la Asuncionへ行くには、鐘楼を目標に、もっとも広い通りを行く。
この教会のゴシック様式の身廊は15、16世紀に建造された0祭壇飾りは16の絵画と4つの円形絵画で囲まれている。
1560年から63年にかけてこの場で聖なるモラレス(「美術」の項参照)により制作された。
この画家の作品は各地に散在しているが、ここには作品がまとまってあり、優しさと優雅さが混じりあった作法をよく見てとれる。
(参考資料:ミシェランガイドなど)