モンテネグロ
ツェティニェ Cetinje †
- 数世紀にわたりモンテネグロの都だった。
ゼータの領主イバン・ツルノエピッチがトルコの襲来を前にスカダル湖畔のジャブリヤクの居城を棄て、ロブチェン山の麓、厳しく近寄りがたいモンテネグロのカルスト地帯にあるツェティニェの原に都を移し、ここに1482年、居館を建てたのがこの町の発祥となっている。
- 2年後には現在のチプルの教会跡に修道院を創建する。これによって新しい都の土台が築かれ、原を流れる川の名をとって、ツェティニェと名づけられた。
- イバン・ツルノエピッチは1485年、それまでブラニナにあったゼータ主教座をこの新たに建立された修道院に移す。
こうしてツェティニェは聖俗界の中心地となった。
- イバンの子ジュルジェ・ツルノエピッチは、オボドにあった南スラブ最初の印刷所をツェティニェに移し、芸術的価値の高い挿絵の入った教会関係書をキリル文字で印刷させた。
- ツルノエピッチの修道院は1692年、トルコに破壊された。
ペトロピッチ朝のダニロ主教公は1701年に、古い修道院の石材や柱頭を用いて現在の場所に修道院を再興するが、これもまたトルコ軍の再三の攻撃を受けて破壊された。
ダニロ主教公は1724年に修道院を再建し、それが今日に伝えられている。
- 修道院には聖ペタル一世ツェテインスキーの遺骸が保存されている。
- ペタル一世はモンテネグロ聖俗界の支配者で、彼の時代に最初の成文法が書かれ、中央政府の諸機関が創立された。
- ツェティニェ修道院はまた、ビリヤルダ（玉突き）館ができるまで、主教、統治者、詩人、哲人ペタル二世ペトロピッチ＝ニェゴシュの官邸であり「思索の場でもあった。
- 歴史を通じて、モンテネグロの国民と国家の運命にかかわる重要な決定はすべて、ここツェティニェの修道院で下されたのである。
- ニコラ・ペトロピッチ公が政権につき、最初の宮殿（1863年）を建設する頃から、ツェティニェは都市としての体裁を整えてゆく。外国の公館や文化、教育、医療施設、ホテルなどが建設された。
- ツェティニェはもはやモンテネグロの首都ではないが、ニコラ王博物館、公文書館、図書館、美術館の町であり、絵画ビエンナーレの開催地であり、大学都市でもある。
- 現在は首都機能はポドゴリツァにあるが、憲法上はツェティニエが首都とされている。
- ツェティニェ修道院は1701-04年に建立され、信仰、政治、文化、教育の中心だった。
- 聖母生誕教会は1886年、ツルノエピッチがチプルに建てた最初の修道院の礎石の上に建立されたもの。
- 中心となっている広場は王宮前広場、旧王宮は現在は博物館になっている。
王宮前広場から続く通りがメインストリート。
見どころ †
- ツェティニェ国立博物館:
イコンのため特別に設計された展示室がある。
奇蹟のイコン「フィレルモサの聖母」といわれるキリスト教の至宝が見どころ。
この聖像画が描かれた場所や時期は未詳だが、トルコのスルタン・バヤジト二世が1484年、これをヨハネ騎士修道会、後のロードス騎士修道会およびマルタ騎士修道会に贈り、そこから18世紀にロシア皇帝に譲られたことが知られている。
イコンは1930年、ロシアの亡命者からセルビアのアレクサンダル・カラジョルジェピッチ王の手に渡り、さらに1941年、他の二つの聖遣物とともにオストログ修道院へ移された。
二つの聖遺物、洗者聖ヨハネの手と聖十字架の断片のほうは現在、ツェティニェ修道院に保存されている。
- 青の宮殿（1895年）；
皇太子の居館で、ツェティニェの歴史的中核を成すニェゴシュ公園にある。
ニコラ公が息子ダニロのために建てた。
建設は1894年に始まり、翌1895年に完成。
正面の豊かな装飾が示すように、時代遅れの第一帝政様式に属する。
- ニコラ王王宮（1867年）；
当初はニコラ公の居館として建てられた。
現在の外観は1910年、公が王位につき、モンテネグロが王国となった時のもの。
1926年以降、国立博物館となっている。
- ブラシカ教会；
ツェティニェ最古の建造物。
教会は遊牧民ブラフ人が1450年に建てた。現在の形は1864年のもの。19世紀末に、モンテネグロが1858年から1878年までの戦争でトルコから捕獲した1544本の銃身でつくった風変わりな垣根が建てられた。
(参考資料：Montenegro Guide by Studio Strugar)
