スペイン

スペインの闘牛

闘牛の見方

闘牛はスペインの祭りの最大のイベントのひとつである。本格的なシーズンは3月のバレンシアの火祭りに始まり、10月のサラゴサのピラール祭で終わる。セビーリャ、マドリッド、パンプローナなどの大きな祭には一流の闘牛士がやって来て、最高の盛り上がりを見せる。また、小さな町では広場を囲って仮設の闘牛場を造って開催されることもある。
 マドリッドやバルセロナでは、シーズン中はほぼ毎週日曜日に開催される。観光客はもっぱら週末にマドリッドやバルセロナに滞在した場合に見る機会が出てくるだろう。

 闘牛士になるには、スペイン国内に十数か所ある闘牛学校で約9カ月間の訓練を受け、見習い(ノビリェーロ Novillero)からスタートする。そして、小さな牛を相手にする下積みを経て、自他ともに闘牛士としての技量が身に付いたと思われた時に進級式を催し、晴れて正闘牛士(トレロ Torero)として認定される。闘牛士には女性もいたし、見習いではあるが日本人もいる。一流の闘牛士になると1日で数百万のギャラが入るという。

 正式な闘牛で使われる牛(トロ Toro)は、数えで5歳以上で、体重は500〜700kgくらいある。3〜4歳の青年牛はノビーリョ Novillo と呼ばれ、見習い闘牛で使われる。生産牧場にもブランドがあり、ミウラ Miuraは特に有名。マドリッドの闘牛博物館などでは牛の頭のはく製を見ることができるが、実際に近くで見るとかなり大きい。角も鋭く、まさに敵を突くためにあるという感じだ。対決する闘牛士は命を落とすこともあるし、角で足を引っ掛けられて跳ね上げられる程度はよく起きる。

進行

 開始時間は夕方、ちょうど闘牛場の半分が日陰になる頃に始まる(昼に開催されることもある)。通常1日に闘牛士が3人、2回ずつ計6回の演技が行われる。合わせて2時間ほどかかる。
それぞれの演技は次のような手順で進められる。
(1)闘牛の登場
 場内の砂場に飛び出してきた牛を、助手がカポーテという闘牛士が持っているものよりも大きなピンクの布をはためかせて走らせる。この間に闘牛士は牛の動きの特徴を見極める。牛に闘争心に欠けていたり、脚元がしっかりしていない場合は交替させられることもある。
(2)ピカドールの場
 防具をまとった馬に乗った「ピカドール」が、牛を馬に突進させて、その隙に大きな槍で牛の肩を突く。これによって牛の体力を弱めるのだが、弱めすぎると観客からブーイングが起きる。
(3)銛(もり)打ちの場
 バンデリェーラスと呼ばれる飾りをつけた銛を持った助手が牛に走り寄り、2本ずつ3セットを牛の背中に刺す。これによって槍で傷められた牛に闘志が蘇る。ギリギリまで取り付いてさっと身をかわす。スピード感十分で、この場面もスリルがある。
(4)闘牛士の演技
 上記の準備が済むと、ムレタという赤い布を持った闘牛士が現れる。ムレタを使って牛を自分の近くに引き寄せて脇を通り抜けさせる。ここで観客から「オーレ!」の声がかかる。一連の動きで牛を操り、闘牛士がポーズを決めると場内から喝采が起こる。
 ムレタを使った演技を終えると、闘牛士は剣を持ち牛の正面に立つ。そして、すれ違いざまに背中から心臓めがけて剣を突き刺す。うまく決まると牛はまもなくその場に崩れ落ちる。うまく刺さらないと牛はまだ立ったままなので、専用の剣で延髄を突いてとどめを刺すことになる。
 演技が見事なものであると、観客は立ち上がりハンカチを振る。それを見て主催者がハンカチでサインを出し、闘牛士に褒美が与えらる。その牛から切り取られた耳1つ、あるいは2つ、さらに良ければしっぽが与えられることになる。

 その後、牛は解体されて、食肉として市場に出る。しかし、近年の口蹄疫騒ぎで、その肉はおろか褒美の耳も即座に焼却処分にするという話も出てきている。

切符の買い方

闘牛の入場料金は、席の場所によって大きく異なる。マドリッドなどの大都市の闘牛場の収容人員は1万人以上にもなり、3階席まである。砂場に近い下の階の方が高い。また、闘牛場の特色として、席のカテゴリーが、日向になる側の席(ソンブラ Sombra)、日陰になる側の席(ソル Sol)、その中間(ソル・イ・ソンブラ Sol y Sombra)に分けられる。料金は日陰の方が高い。主催者の席もソンブラにあり、演技もそちらを意識して行われる。
 興業の格によっても料金は変わってくる。祭りで一流の闘牛士がやってくるような場合は高くなるし、Novillaを使う見習い闘牛は、正式な闘牛にくらべると入場料は安い。
それで実際にいくらなのかというと、上記の要素が絡んで一概には言いにくいのだが、一番高い席だと1万円以上するし、安い席なら数百円で足りる。
かぶりつきに座れば迫力が増すことは確かだが、そうでなくても周囲のスペイン人と一体となって「オーレ!」と叫べば、十分に楽しめるだろう。

入場券は普通は当日に闘牛場の窓口で買い求めるが、大きな興業だと前売りもあり、市内の切符売り場でも販売される(この場合、20%ほど手数料が上乗せされる)。
 祭りの期間以外のマドリッドやバルセロナなら席は当日でも取れるが、セビーリャやパンプローナの祭りの時に行われる興業は、闘牛士も人気どころが揃い満員となるので、当日に窓口に行っても遅い。ダフ屋もいて、それなりの枚数は持っているが.