ボルドー Bordeaux
概要
フランス大西洋岸の最も南となるアキテーヌ地方の古都で、ピレネー山脈から流れるガロンヌ川沿いにある大都市。
古くからワインの生産と輸出で繁栄した港町。
1151年フランス国王ルイ7世の王妃であったアリエノール・ダキテーヌ(1122-1201年)は宮廷に現れた11歳年下の貴公子と恋に落ちた。相手はアンリドゥ・プランタジネット(1133-1189),フランス名門貴族の貴公子だった。
アンリノールは王妃の地位を捨て、その翌年アンリと結婚。そして2年後、夫のアンリがイギリスの国王になってしまった。
アリエノールは今度はイギリスの王妃、そして彼女の領土はイギリス領になってしまった。その領土こそ、ボルドーを中心とする地域だった。だからフランスのほぼ半分がイギリス領となってしまった。
イギリス領だった300年間、ボルドーの河港から大量のワインがイギリス本土へ運ばれていったのである。
イギリスではワインが造れず、すべての需要を賄ったのがボルドーだった。
それによってボルドーのワイン造りがますます盛んになって行った。
18世紀ボルドーは国際商業都市としての役割を担っており、ガロンヌ川から上陸する人々を迎えるための広場が造られた。
1775年に完成した当時は王国広場と呼ばれ、ボルドーの繁栄のシンボルとされた。
18世紀フランス古典主義建築の代表的建物である。
年月が経ち、建物は全部汚れて真っ黒だったが、それらをすべて取り去ろうというプロジェクトが立ち上がり、
薄汚れていた川沿いの倉庫街を再開発し、おしゃれなウオーターフロントに再生。18世紀の作られた美しい町並みを目覚めさせようとして、川沿いは殆ど駐車場だったが、すべてレストランやスポーツ場、また水の鏡を造り、街の人々がどんな時でも遊べるようにした。
もともと黄色い石灰岩で作られたので、水洗いして黄金の町として蘇ったというわけである。車の排気ガスを減らすためにレンタサイクル、トラムなどを導入、これにより車を30%減らせた。
現在、ブドウ畑の総面積は約15万ヘクタールにおよび。
7800のブドウ園と、2万5000のワイナリーがあるフランス国内最大のワインの産地。
ワイナリーはシャトーと呼ばれ、独自の格付け制度があることでも知られている。
赤、白、ロゼともに造られているボルドーワインはワインの女王とも呼ばれている。
ワインシャトーでは見学や試飲が可能だが、広いボルドーのワイン生産地で、ボルドー市内からは徒歩でシャトーを訪れることは不可能だ。
そこでボルドーワインの生産者たちが組織するボルドーワイン委員会(1948年設立)は、市内に高品質のワインを一般の人が試飲できる空間を作っている。
ワイン委員会の建物の1階にあるバーで、2006年にオープン、年間6万人が訪れている。ワインリストには60以上ある。ボルドーのAOC(原産地統制名称)ワインから毎月選定、観光客だけでなく、地元でも人気の穴場的バー。サービススタッフは委員会公認のソムリエ、ボルドーワインを知るには最適な空間となっている。
スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路が1998年に世界遺産に登録されているが、フランスからの4つのルートのうち、ボルドーにある3つの寺院も含まれている。
サン・タンドレ大聖堂 、サン・スラン大寺院 、サン・ミッシェル大寺院
このほかにも、2007年に市内の歴史地区が「月の港ボルドー」の名で、世界遺産に登録されている。
ボルドーには、ボルドー大学を始め、高等教育機関が多く、市内の学生数は約7万人で、ヨーロッパ最大級の学生町となっている。
カヌレ;ボルドーの名産。
ワインの澱をとるために使用していたのが卵の白身で、残りの黄身の部分。
樽一つに6-7個の卵を使う。残った黄身を職人たちが持ち帰り菓子を作っていた。(QTA)
アクセス
鉄道駅
ボルドー・サン・ジャン駅 Bordoux St. Jean
パリ・モンパルナス駅からTGVで約3時間。
トゥールーズからはTGVで約2時間、急行なら約2時間10分。
駅前にはトラムの停留所がある。
空路
パリ・オルリー空港またはシャルル・ド・ゴール空港からボルドー・メリニャック空港へ、約1時間15分。
空港
メリニャック空港 Bordeaux Merignac Airport(BOD)
空港から市街へバスで約30分。
市内の交通
市内にはトラムが走る
2003年に開業、3路線
車両は天井が木目調、低床式5両編成。
旧市街では、美観維持のために、電線が地下に、地表集電方式と呼ばれている。
見どころ
ボルドーにはイギリスの統治時代にイギリス人が建てたものがいくつかある。
聖アンドレ大聖堂 Cathédrale St. André
ゴシック様式の尖塔が特徴的。
カンコンス広場 Esplanade des Quinconces
パリのコンコルド広場の1.5倍、ヨーロッパ最大の広さを誇る。
モンテーニュとモンテスキューの2人の思想家の像がある。
カイヨ門 Pl. du Palais
中世の町の入口だった
サン・ミッシェル寺院 Basilique St. Michel
高さ114mの鐘楼を持つ
大劇場 Grand Théâtre
コメディー広場にある。
パリのオペラ・ガルニエ設計の際にモデルとなったといわれる。
シテ・デュ・ヴァン La Cite du Vin
世界中のワインを知ることが出来る博物館。
2016年6月にガロンヌ河沿いに誕生。
ブドウ畑世界一周、世界17か国のブドウ畑を映像で紹介。
展示コーナーは18か所、ワインに関する雑学も学べる。
レストラン「ルセット」から市内が一望できる。
8か国語に対応したオーディオガイダンス。
入場料EUR20、1杯の試飲券つき。
ボルドーワインの生産地
ボルドーの市街地はガロンヌ河Garonne沿いにあるが、少し下流で北側から流れてくるドルドーニュ河Dordogneと合流し、ジロンド河Girondeと名前を変える。
ボルドー地方の広大なブドウ畑は、これらの3つの河川の沿岸の緩やかな斜面の平地に広がっている。
ボルドーの町の中心を流れるガロンヌ河を境にして、右岸の土地は粘土質、左岸の土地は砂礫質。それぞれブドウの品種が異なるため、渋みや香りといった味わいが異なる。
左岸には主にカヴェルネ・ソーヴィニヨンCabernet Sauvignonという品種が多く、複雑で薫り高い味わい、メドック地区で中でもジュリアンは品質も高いワインが生産されている。
右岸は主にメルローMerlotという品種が多く、まろやかな味わいが特徴とされる。
いずれもボルドーワインの多くがいろいろな品種のブドウ品種をブレンドすることでより複雑で豊かな味わいを生み出している。
生産地は5つの地区に大別できる。
メドック地区 Medoc
ジロンド河の左岸地域。比較的温暖な海洋性気候で、砂利の多い水はけのいい土壌である。主にカベルネ・ソーヴィニョンを主体とした長期熟成タイプの赤ワインが作られているメドックの中でもジロンド河の最下流エリアが「メドック Nedoc」、上流エリアが「オー・メドック Haut Medoc」と2つの地域に分類されている。
オー・メドックには、格付けシャトーが集中している地域で、
サン・テステフ St Estephe
ポイヤック Pauillac
サンジュリアン Saint Julien
マルゴー Margaux
などが有名でA.O.C.を名乗ることができる。
中でもポイヤックはボルドー5大シャトーのうち3シャトーが集中している。
シャトー・ラフィット・ロートシルト Ch.Lafite Rothschild (Paullac)
シャトー・ラトゥール Ch.Latour (Paullac)
シャトー・ムートン・ロートシルト Ch.Mouton Rothschild (Paullac)
シャトー・マルゴー Ch.Margaux (Margaux)
シャトー・オー・ブリオン Ch.Haut Brion(グラーヴ)
グラーヴ地区 Graves
ガロンヌ河の左岸地域でボルドーの市街地より南側に幅12km、全長約60kmの地帯に広がる。
源流をスペイン国境のピレネー山脈に発しているガロンヌ河が運んだ砂利と玉石に覆われている。砂利を意味するグラーブ Gravesが地名の由来である。
ガロンヌ河沿いの土地はワインの輸送手段としての恵まれた立地条件にあり、ボルドーの中でも早くから発達し、この地区のワインがボルドーの名を世に広く知らしめた。
砂利を多く含む土壌で、赤ワインにカベルネ・ソーヴィニョン品種が多く栽培されているが、この地域は高品質の白ワインも生産されており、ソーヴィニョン・ブランが栽培されている。
ソーテルヌ地区 Sauternes
ガロンヌ河左岸上流地域。霧が発生しやすい地域で、ブドウに貴腐菌が繁殖しやすく、セミヨン種を主体とした貴腐ワインの産地として知られている。
ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼ、ハンガリーのトカイと並び、世界三大貴腐ワイン産地といわれている。
砂利が推積した丘陵が連なるソーテルヌと、その北に続くボンム、フォルグ、プレイニャック、バルサックの5つのコミューン(自治体・村)で生産されている。
セミョン種とソーヴィニョン・ブラン種のブドウで作られる貴腐ワインで、極甘口でデザートワインとして飲まれている。
ソーテルヌで一級に格付けされたワイナリーは現在11軒。各村で生産されるワインのAOC(原産地呼称名称)には「AOCソーテルヌ」が用いられているが、バルザック村産では「AOCバルザック」も使われている。
サンテミリオン・ポムロール地区 Saint Emilion, Pomerol
ドルドーニュ河右岸リブルヌの街を中心とした地域。主に石灰岩と粘土からできている。
土壌からはメルローやカベルネ・フランを主体とした高品質の赤ワインが生産される。
ボルドー右岸を代表するワイン産地で、左岸のメドックと双璧をなす高級赤ワインの産地である。
やや内陸に位置するため、温暖な大陸性気候とドルドーニュ河とその支流がもたらす水の恵みによって土壌は複雑で変化に富む。
畑によって風味が微妙に異なる変化を生み出す。さらに各生産者の所有する畑の規模は比較的小さいため、生産量が少なく希少価値が付きやすい。そのため高額で取り引きされるワインもある。
1999年に世界で初めてワイン産地として世界遺産に登録された。
サンテミリオンにい隣接して西側にポムロール地区がある。
ポムロールはリブルネLibourneの町に近い約800ヘクタールの畑が指定されている小さな村だが、ボルドーワインの中では最も高価とされるシャトー・ペトリュスやシャトー・ル・パンなど評価の高いワインを産する地区である。
リブルネの街の西側にあるフロンサック地区 Fronsacという小さな村では赤ワインが造られている。
ブライ・ブルジェ地区 Blaye-Bourgeais
ジロンド河の右岸で、土壌がより多くの粘土質を含んでいる。
ブライ地区は赤ワイン中心でメルロー種が主体でカベルネ・ソーヴィニヨンなどを混ぜている。
ブルジェ地区は赤と辛口白の両方が生産されている。
白ワインはソーヴィニヨン・ブランを主体とし、セミヨン、コロンバード、ミュスカデル、メルロー・ブランが混ぜられる。
どちらも中級クラスのリーズナブルなものが多い。
アントル・ドウ・メール地区 Entre Deux Mers
ガロンヌ河とドルドーニュ河の大きな河に挟まれたエリア。カジュアルなものからコストパフォーマンスの良いワインが作られています。
ガロンヌ河とドルドーニュ河の2つの大きな河に挟まれた土地なので、Entre-Deux-Mers 2つの海の間)という地名になった。
広大な地域に野菜畑と草原と森林の間にぶどう畑が点在している。
ソーヴィニョン・ブランを主体にした白ワインの生産が多い。
この地域は高級なワインは生産されていないが、低価格ながら良質ワインが生まれている。広大な地域で生産量も多い。
ラベルの中心にBordeauxと大きく書かれている者ものにはこの地域のものが多い。
おすすめレストラン
ラ・テュピナ La Tupina
6 Rue Porte de la Monnaie
Tel:05 56 91 56 37
ボルドーの郷土料理が食べられる。田舎風の素朴な雰囲気のカジュアルな店。
ワインバー
ル・バール・ア・ヴァン Le Bar a Vin
3 Cours de 30 Julliet
ボルドーワインの普及に努めるボルドーワイン委員会の経営。
いろいろなボルドーワインをグラスワインで飲むことができる。
通常の店の3分の1ほどの値段で飲める。
いいワインの見分け方などのレクチャーもある。
最寄駅:カンコンス(トラム)
ショップ
ランタンダン L'Intendant
2, Allees de Tourny
ワイン専門の老舗。ボルドーワインの殿堂。ほとんど全銘柄がそろっている。
店内を見るだけでも、いい勉強ができるほどだ。