概要
-屋根付き木造橋「カベル・ブリッジ」が街のシンボル。
-ピラトウス山、リギ山、ティトリス山などへの日帰り旅行のベースとなっている。
-「4つの森の国の湖」(フィーアヴァルトシュテッテ湖・通称ルツェルン湖)の北西端に位置し、ロイス川はここからふたたび流れを開始する。
-もともとは一漁村にすぎなかったが、8世紀にムルバッハのアルザス大修道院に属するベネディクト会の小修道院が建立されてから一部に名を知られるようになった。
-町の建設は1178年といわれる。
さらに13世紀にコッタルド街道が開通すると、北のフランドル地方と南のイタリアをつなぐ要衝の地となった。
そして、連邦共和国になる前の、近隣の最初のスイスの州「ヴァルトシュテッテン(森の国)」の3国と積極的に通商関係を結び、莫大な利益を得るようになる。それにより1332年に3原州に続く第4番目の州として政治的なスイス誓約同盟に加盟するに至る。
-宗教改革の波がこのあたりにも及んだ時、ルツェルンはカトリック側の抵抗運動の先頭に立って戦った。
-1574年には、イエズス会がドイツ語圏スイスで最初の学校Kollegをここに創設している。周辺には、スイス建国とウイリアムテルにまつわる伝説が数多く残っている。
-旧市街には歴史ある噴水や家々の壁画が残り、ロイス川に架かる橋には屋根つき木橋があり、背後の山腹にはかっての城塞の名残である城壁に結ばれた7本の四角い塔がそびえている。
一方、新しい市街地は、ムゼック、ギュッチュ、デイーチベルクの丘まで広がっている。

データ
標高:436m
人口:約65,000


アクセス
鉄道
中央駅はルツェルン湖畔にある。
チューリッヒから約1時間。
ドイツ・フランクフルトやイタリア・ミラノとの直通列車も運行されている。
(近郊への列車での所要時間)
--ツークZug:約20分
--アインジーデルンEinsiedeln:約1時間10分(乗換1回)
--シュヴィーツSchwyz:約40分
--アルトドルフAltdorf:約1時間10分(乗換1回)
--アンデルマットAndermatt:約1時間40分(乗換1回)
--スルゼーSursee:約20分
--センバッハSempach:約20分
--ヴェッギスWeggis:湖船で約50分/列車とバスで約40分(乗換1回)
--シュタンスStans:約20分
--サルネンSarnen:約25分
--インターラーケンlnteriaken:約1時間50分
--ヴイールWil:約1時間45分(乗換1回)
--パーデンBaden:約1時間15う)(乗換1回)
--レンツブルクLenzburg:約1時間20分
--ラッパースヴイールRapperswil:1時間20分
--アーラウAarau:約1時間10分(乗換1回)
--ソロトゥルンSolothurn:約1時間10分(乗換1回)
--ブルグドルフBurgdolf:約1時間25分(乗換1回)
--トゥーンThun:約1時間30分(粟換1回)
--シュピーツSpiez:約1時間40分(乗摸1回)
--フリブールFribourg:約1時間30分

湖上遊覧
ルツェルン湖の景観を船からは、リギ山、ピラトス山などが一望できる。
船はルツェルン駅近くの桟橋から出発して、フィッツナウやリギ山登山電車駅などに立ち寄って湖を一周する。
湖を一周するのに約6時間を要する。レストランもある。

市街地
湖の西端、ロイス川に流れるところに中央駅があり、大きな近代的なゼ一橋Seebruckeを渡ると旧市街になる。
豪邸が立並ぶ街路樹のつづく湖岸(Schweizerhofquai.Naionallquai)からは、街のたたずまい、ルツェルン湖、その背後につらなるリギからピラトウスヘのアルプスの山並の眺望が楽しめる(展望案内盤あり)。湖にそってなお散策を続けると、カールシュピッテラー岸Carlspittelerquaiに到着する。そのはずれに緑地とリドの水浴場がある。
シュヴァーネン広場Schwanenplatz(白鳥広場)から、ザンクト・ベーター礼拝堂のあるカペル広場Kapellplatzまで。
 カペル広場中央には「フリッチの泉」があり、謝肉祭、春、歓喜などの像が立っている。
フリッチとは伝説的な人物で、その栄誉をたたえて、15世紀以来毎年、謝肉祭が開催されている。にぎやかなショッピングストリートのカペルガッセKapellgasseは、コルンマルクトKornmarkt(穀物市場)へと続く。


見どころ
カペル橋 Kapellbrucke
14世紀初頭に建造された屋根付き木造橋。湖がロイス川に流れるその出口に架かっている。
全長280mを越えるこの橋は、街を湖側の侵入から守っていたもの。
橋の途中にあるヴァッサートゥルムWasserturm(水の塔)と呼ばれる、瓦屋根をのせた8角形の大きな塔はかつての見張り台。
梁に約110枚の板絵が飾られている。
17世紀初頭に制作され、20世紀初頭に修復されたこれらの絵には、ルツェルンやスイスの歴史、街の守護聖人聖レオデガルと聖モーリスの伝記が描かれている。またそれぞれの絵に、ドイツ語の韻文による説明が添えられている。
1993年の火災で半焼失したが翌年見事に修復された。

ワイン市場 Weinmalkt
旧市街の中心に位置する美しい広場。
広場を囲む古い家々の壁にはさまざまな壁画が描かれ、たくさんの看板や旗が飾られている。
ここにはかってギルドが置かれていた。
7番地の天秤館や、1530年建造のヴァインマルクトアポテケWelnmarktapotheke(ワイン市場薬局)が見どころ。
広場中央のゴチック式の噴水には、軍人の守護神である聖モーリスや戦士たちの像がある。そのオリジナルは州庁舎にある。
近くのクラムガッセKramgasseを入ると、16世紀に遡るミューレン広場MOhlenplatz(粉ひき工場)に辿り着く。かってはここに市が立った。シュプロイヤー橋、ロイス川対岸の古い家並、その背後のギュッチュの丘がここから一望できる。

シュプロイヤー橋 Spreuerbrucke
ロイス川支流にかかる屋根付きの橋で、「粉ひき橋」とも呼ばれる。
1408年に建造され、前世紀に修復された。
17世紀のカスバール・メークリンガーの制作になる「死の舞踏」を描いた板絵が飾られている。橋の中央には1568年建立の小礼拝堂がある。

ホーフ教会 Hofkirche
湖岸にあり、ここのパイプオルガン(1650年)が有名。
街の守護聖人サン=レジェ(聖レオデガル)に捧げられたこの参事会教会は735年に創建されたが、1633年の火災でゴチック様式の塔を除いてすべて灰煙に帰し、その後ルネッサンス様式で再建された。
イタリア風の回廊に取巻かれている。
巨大な階段をのぼると後期ルネッサンス様式の広い内部に達し、鉄格子に仕切られた内陣には美しい聖職者席がある。
多くの人物を配した金色の祭壇画が、側廊の10の祭壇を飾り、その中では右側廊の「ピエタ」(嘆きの聖母像)、左側廊の「聖母の死」が見どころ。

ライオン記念碑 Lowendenkmal:
フランス革命時の1792年8月10日にパリのチュイルリー宮殿が奪取された際に、ルイ16世を守り戦死した勇敢なスイス人傭兵を偲び造られた瀕死のライオンの記念碑

氷河公園 Gletschergarten
1872年に発見された「巨人の翫穴」と呼ばれる32の穴が見られる。
これら氷河の残した渦の跡は深さ9・5m、直径8mに及ぶものもあるが、氷河のクレバスを落下する水にうがたれ、それに混じって流された回転する石でえぐられたもので、石の一つは重さ6トンにも達する。
ここの博物館には、先史時代の標本(動植物の化石)、18世紀に作成された中央スイスの最初の立体地図、古い家具などが展示されている。
3階にはルツェルンの昔を偲ばせる地図や版画、18世紀の家具が置いてある。

-ムーゼック城壁 Museggmauer:
1350−1408年に建造された市の城壁の跡で、かっては町全体を取り囲っていた。
監視と防御の塔が9茎残っている。
91段の階段をのぽるシルマー塔Schirmerturmからは、街と湖が一望できる。

スイス交通博物館 Verkehrshaus
ヨーロッパ最大の交通博物館
3 Lidostrasse、(湖に近い)
1959年創設のこの博物館は、スイスの交通機関発達の様子を蘇らせてくれる。
12の建物にさまざまなセクションが分置されていて、それらの建物の間には遊び場、レストラン、緑地などがある。
-スイスの鉄道
ニつの巨大展示場には約60台の客車、蒸気機関車、電気機関車が収められている。
蒸気機関車では一番古い1858年製と、一番強力な1916年のもの(空車重量93トン以上)。
電気機関としてスイスの市電第1号に使われた18B8年製のもの、サン・ゴッタルド線の最初の電気機関車(1922年)などがある。
その他に、1881年の郵便列車、1873年のラックレール式蒸気機関車(これはスイスの発明)、1896年製の蒸気ラッセル車なども注目に値する0さらに貨物操車場やサン・コッタルド線の北部斜面を走る列車の動く大型模型、豊富な列車模型のコレクションなども見ることができる。
なおミニチュアの蒸気機関幸が子供たちを乗せて実際に走ってくれる。
-自動車、オートバイ、自転車
1階には約40台の乗物のコレクションがある。
その車種は、最古の1898年型のポップ(バーゼル)から、1904年型クレマン=バヤール(フランス)、1905年型のレ一シンク・カー、デュフオ(ジュネーヴ)、1908年のチューリッヒのタクシー、1911年型のスタンレー、1926年型のロールス=ロイス、1933年型のメルセデス(銀の矢)、そして1968年型のランボルギーニヘと及ぶ。中2階には、19世紀の数台の橋、大型乗合馬車、4輪馬車が陳列されている。
2階には50台ほどの自転車(1875年の大型自転車、1880年のエンガディン地方の4輪車など)、新旧のオートバイや自動車のエンジンなどが展示されている。
-郵便・通信
最初の棟では、スイスにおける郵便の発達、郵便業務の歩み、その実際の内容、切手の製造などが展示され、切手収集家のためのコーナーも設けられている。
第2会場では、通信の歴史を段階的にたどり、電信、電話、ラジオ、テレビなどの最新の成果も見ることができる(入館者が実際に操作できるようになっている機器もある)。
-航海、ロープウェイ、観光
2階フロアーは航海のセクションで、数世紀にわたる航海術の進展を物語る、模型や計器盤の興味深いコレクションが展示されている。
なおこの会場には、外輪車の付いた本物の蒸気船、1847年製「リギ丸」が置かれているが、今はセルフサービス式レストランとして使われている。1980年に船主フィリップ・ケラーが当博物館に遺贈した船舶のミニチュア、海洋関係の書軌絵画を一堂に集めたコーナーもある。
3階のロープウェイの会場にはヴェッターホルンに乗客を運んだこく初期のスイス製のロープウェイのキャビン(1908)、ザース=フェー近辺のシュピールボーデンとレンクフルーを結ぶ、1984年製の超近代的なキャビンなどが並んでいる。観光部門では、スイスの代表的物産や活動が陳列・展示され、景勝地のパノラマ映画「スイソラマ」が公開されている。
-軽飛行機からロケットまで
気球や飛行船の模型、熱気球の吊り籠、さらに定期航空便の装備一式などが並べられている。
天井からは、初期の複葉機から超音速ジェット機、さらには山岳救助用のヘリコブターなど、スイスの民間機、軍用機の実物見本が3D機以上も吊り下げられている。
大型機種は床や建物の外に置かれている0それより上の階は宇宙航空部門である0柑60年代のアメリカ合衆国による、宇宙旅行と月面着陸の際に使用されたものがいろいろと保存されている0ロケットの外装材や部品、回収された人工衛星、マーキュリーとジェミニの「カプセル」に加えて、月面着陸時の宇宙服や月の石の標本、さらに種々の付属品、模型などである。
3階では宇宙探険の歩みを見せる解説付きの「コスモラマCosmorama」(上映時間30分、170平方mの画面)が上映され、1階ではプラネタリウムの「ロンジンLongines」が宇宙のさまざまな現象を興味深く見せてくれる。

旧市庁舎 Altes Rathaus 
ロイス川のほとりに1602−06年に建てられたルネッサンス様式の美しい建物で、脇に四角い塔があり、コルンマルクトが見下ろせる。
市庁舎右手の「ガストハウス・ツー・プフィステルン」のファサードを飾る壁画が見のも。

ピカソ・コレクション Picasso Sammlung 
市庁舎左手のアム・リューン館Am Rhvn Hausは、これもルネッサンス様式で、ピカソの絵画、クワッシュ、淡彩画、デッサン、版画、そして一冊の本が収めてある。
ピカソ晩年の20年に描かれた作品の大部分は、ルツェルンの画商、ローゼンガルト家からの寄贈による。
収蔵作品でとくに目につくのは、1956年、カンヌのアトリエにおける夫人ジャグ−ヌの肖像画と、マネの「草上の昼食」の大胆なヴァリエーション。後者には、ピカソ自身が右側に腰を下ろしているのが見える。

ハンス・エルニ美術館
現代技術社会の芸術的表現を趣旨とし、1979年に寄贈されたこの美術館にルツェルン出身の現代の大画家ハンス・エルニの絵画約300点(さらに陶磁器)が収められている。
それらは1930年代の抽象画、40年代以降の象徴的画風のものや具象画である。
ホールにある2枚のフレスコ画(40m)は、西欧の古今の著名な学者や思想家を描いたもの。
-ヒルシェン広場(Hirschenplatz/鹿の広場)
広場を取囲む美しい家々は復元されたもので、彩色されたファサードには鉄製の看板が掲げられている。
ここはかつて人々の待ち合わせ場所として使われ、1779年にはゲーテがここの「ゴルデナー・アドラー(黄金の鷲)」に滞在している。

市立美術館 Kunstmuseum
美術・会議館Kunst-und Kongresshaus)の一角にあり、ルツェルン国際音楽祭もここで開催される。
2階の展示室には、16世紀のスイス(マルティン・モーザーの「ラザロ伝」)や外国(ホルパイン・ジュニアの「ルクレチアの自害」)などの板絵と若干の宗教的彫刻、さらに17世紀(カスバール・メークリンガー「死の舞踏」)、18世紀(J.メルキオール・ヴィルシュ、アントン・グラフの肖像画)の油絵が見られる。
奥の部屋(19世紀末〜20世紀初頭)には、スイスのレアリスムの画家たち、ヴァロットン(ぱらの花を持つ婦人)、ロベール・ツュント(風景)、フェルディナント・ホドラー(肖像画、風景、寓意画)マクス・ブリなど。フランスのデュフィ(ブ一ローニュの森)、ユトリロ(「ムーラン・ド・ラ・ガレット」)、フジタ(風景)、ヴラマンク(静物画)などの小品もここにある。3階には、19、20世紀のスイスの画家による作品が陳列されている。

リヒアルト・ワグナー博物館 Richard-Wagner-Museum 
1866年から72年にリヒァルト・ワグナーが過ごした邸宅を博物館として改造したもの。
湖へとなだらかに傾斜する広い公園の中央の岬の上にあり、環境は快適0「マイスター・ジンガー」、「神々の黄昏、「ジークフリート」といった代表作はここで作曲された。
1階では作曲家の自筆楽譜や生前の思い出の品々、2階には古い楽器を展示。

イエズス会教会 Jesuitenkirche 
スイスで最初の「イエズス会様式」の大きな教会(1667〜77建立)。
簡素なファサードは2本の高い塔に囲まれ、その上には球形ドームの鐘楼が載っている。
内部は威厳のある均衡美を見せる。
主身廊のボールトはフレスコ画でおおわれ、主祭壇には、ぱら色大理石を模したスタッコ仕上げの巨大な祭壇画が飾られている。
主身廊のスタッコ仕上げはロココ様式の影響をうかがわせる(1750年)。

州庁舎 Rogiorungsgebaude
壁面に打ち出し模様のついた典型的なフィレンツェ・ルネッサンス様式の建物で、市政官のリッターのために1557〜64年に建てられ、1804年以来州政府の所在地となっている。
その中庭にはヴァインマルクトの噴水の装飾物のオリジナル(1481年製作)が置かれている。
-フランシスコ会教会 Flanziskanerkirche
13世紀に建造され、たびたび改装されているが、17世紀の木製の立派な聖職者席と説教壇を残している。

聖カール教会 St.Karlikirche
1934年に建築家のメツガ一によって建てられた近代的な教会。
ポーチの上には4人の福音史家の彫像が載っている。
内部の身廊は天井が平らで、高い柱に支えられている。
フレスコ画に飾られたこの身廊には、黄色と紫色のステンドグラスから光が射し込んでいる。
ロイス川に面したテラスからは、ムゼック城壁の塔が望まれる。

ルツェルン周辺
ピラトウス Pilatus
ビュルゲンシュトック Burgenstock
リギ Rigi


(参考資料:スイス政府観光局など)